4:添削の効果が薄い
ここでの添削は、決まった課題を提出し、専門の方にチェックしてもらうことをさします。
おおむね進研ゼミの赤ペン先生をイメージすると良いでしょう。
「クリスタ ●●講座 添削」「クリスタ ●●講座 レビュー」などで画像検索すると、高確率で具体例が見れます。
私も実物をいくつか見ましたが、結論は「たくさん褒めるのはいいが、アドバイスが効果的じゃない」でした。
こういった添削は無限に受けられず、だいたい3~5回と回数が決まっています。
自分のオリジナル作品ではなく、決まった課題を添削してもらう形がほとんどで、1枚につき3~5コメントが相場です。
たくさん褒めてくれるのはとてもいいと思いましたが、総じて改善点のアドバイスが弱いと感じました。
たとえばこんなアドバイスが多いのです。
- 配色にオリジナリティを出してみましょう
- この部分の塗りをもっと入れてみましょう
- ここは質感を変えた表現をしてみましょう
- ここの線はもっと丁寧に描きましょう
的外れではないものの、語彙が短く抽象的です。
人を育てるアドバイスは具体的にしないと効果が出にくいです。
少し話はそれますが、抽象的な指摘がいけないわけではありません。
たとえばアニメの音響監督である本田保則さんは独特な演出をされるそうです。
「ここもっとコリンコリンな感じで」「(声を)緑色で」など、人気声優さんも「その時はわかりましたって言ったけど、実は今だににわからない」とおっしゃっていました。
歌手の松田聖子さんが作詞家の松本隆さんの歌唱指導を語ったときは、「こういう風に歌ってください」など具体的な指導はないとおっしゃっていました。
「もっとセイシェルの海を感じて歌って」「ここはもっと波を高く歌って」など、イメージや感覚100%のアドバイスだったそうです。
このように抽象的だからこそ感性が磨かれるアドバイスも存在しますが、さきほどの添削例はその種類ではないように思えます。
では、現役のプロの赤ペン指導はどんなものでしょうか?
一例をお見せします。
これから紹介するみなと鈴先生は、2006年~2008年の講談社「別冊フレンド」にて、漫画投稿者アドバイスコーナーと投稿者用小冊子を担当しておられた、アドバイスの経験と実績が豊富な漫画家さんです。
みなと先生は私の講座を受けており、そのご縁でこのツィートを見かけたのですが、大いに共感しました。
特に「抽象的な指摘で直すのは本当に難しい」の部分です。
ここからは私の想像ですが、おそらく本が主体の通信教育は、受講者が数十人規模ではテキスト代などの採算が取れません。
少なくとも、受講者数は三桁以上を想定していると思います。
不公平なくその添削をさばくには、あまり高度じゃない添削マニュアルじゃないとやっていけないと思われます。
この「不公平なく」がポイントです。
通信教育の添削者は、「▲▲資格保持者」など、一定の知識水準はクリアしていることが多いです。
ですが知識と指導は別のスキルなので、添削者によって指導力に差は出ます。
仮に「知識100/指導力100」の添削者Aさんと、「知識100/指導力20」の添削者Bさんがいたとします。
「運よくAさんに見てもらえた受講者さん」と「Bさんにしか見てもらえなかった受講者さん」で得るものに差が出ると、同じ金額を払ったのに不公平になってしまいます。
よって「アドバイスの字は丁寧に書きましょう」などの、表面的で指導の本質からずれたマニュアルにせざるを得ず、ぼんやりした添削で終わってしまうと考えられます。
講座運営で働く人にも生活がありますから、ビジネスとして成り立たせるため、致し方ない事情があるのはわかります。
それでもやはり、限られた添削で限られた数しかもらえないアドバイスが、抽象的な指摘で終わっていたらもったいないと思います。
絵に添えるコメント以外に文章のやりとりもありますが、前述したように初心者さんは的確な質問が苦手なので、的外れな回答で終わってしまうことが多いです。
もちろん、この添削で成長できる方もいます。
ただ、成長しづらい方のほうが多いだろうと思うのです。
なお、動画配信などオンライン(ネット通信)の講座は、もっと細かく具体的に添削をもらえる傾向があります。
「見やすく手厚いテキスト」がないので、指導スキルの高いプロのクリエイターを雇うなど、人件費にコストをかけられるからです。