こんにちは。初心者さんのデジタル化をサポートする南乃フリュです。
コロナ禍以降、メンタル系のトラブルや発達障害をお持ちのクライアントと話す機会が増えました。
漫画業界は何かしらダイナミックな振り幅のある方が多いですよね。笑
クリスタの使い方をただ教えればよかった以前と違い、現場のデジタル化もサポートするので、表面的な対応では賄いきれないことがたくさんあります。
たとえばスタッフを入れたいか入れたくないか、それはなぜか、入れるなら何に不安があり、いまどうしていて、どんな風に困っているのか。
いろんな話を聞かねばなりませんが、不用意な対応で無駄に消耗させてしまう可能性もあるので、試行錯誤しています。
先日、面白いなぁと思ったことがあり、仕事に使えそうだったので備忘録かねて記事にします。
「あえて先入観を持って人と対峙すること」についてです。
名越先生のゲームさんぽ
私が先入観について考えるきっかけは、精神科医や当事者の投稿をめぐっているうち、この動画にたどり着いたことでした。
TVでおなじみの精神科医、名越康文先生が「Neverending Nightmares」というゲームを解説する企画です。
過酷な制作環境や経済的な不安が原因で持病の強迫性障害とうつ病を悪化させた製作者であるMatt Gilgenbachの体感した感覚を再現した作品となっている。
Neverending Nightmares(ウィキペディア)
クリエイト業に関わっていて、経済的に余裕がなく、メンタルのトラブルがある。
まさに私が知りたい世界をプロがどう見ているかに触れられる、貴重な動画でした。
ちなみに「ゲームさんぽ」はYouTuberのなむさんが始めた企画で、現在はライブドアニュースがメインで運営されているシリーズです。
ゲームさんぽをひと言で説明すると、「ある視点を共有するゲーム実況」。いろいろな人とゲームの中でさんぽすることで、「人によって世界のとらえ方が違うこと」を学ぼうというものです。
ゲーム実況の新しい形「ゲームさんぽ」大解剖
漫画業界ではギリシャ神話研究家の藤村シシンさんの動画が人気なので、見たことがある方もいると思います。
先入観を持つとは
名越先生の先入観
#1の6:38、名越先生の言葉に私はびっくりしました。
僕たち(精神科医)は強い先入観を持って診ます
だから僕が言ったことは当たってること半分、間違っていること半分
安穏と「なんか怖い映像やな」って思ってたらもうこれは失格なわけで、強烈に「こうじゃないか?」っていう仮説を立てていくわけ
私の仕事は精神科医じゃなく「クライアントが納得するデジタル化をサポートすること」です。
目的は治療じゃないので、名越先生のように「分析前提で1分ごとに仮説を立てるつもりでクライアントを見る」必要はないと思いますが、それでも目からうろこでした。
「先入観を持って相手と対峙してはいけない」「ありのままに対処しなければいけない」と、なんとなく思っていたからです。
H×H 8巻の先入観
「先入観を持って仕事に当たってはいけない」「ありのままに対処しなければいけない」と聞くと、思い出すキャラがいます。
『HUNTER × HUNTER』8巻で登場した、クラピカの上司である護衛団のボス、ダルツォルネです。
クラピカは「犯人の心当たりを教えてくれ」と言いますが、 ダルツォルネは「敵の姿を勝手に想像するな、近づくもの全てが敵だ」と言います。
富樫義弘、HUNTER×HUNTER 8、集英社、1999~2000、129p
かつての同僚が磔にされた絵画を前にし「オレの教えを守らず敵の偽情報に踊らされ勝手に敵を想像し、結果、護衛団はおろかボスを危険にさらした。したがって処分した」と続きます。
富樫義弘、HUNTER×HUNTER 8、集英社、1999~2000、132p
これを読んだ時「この考えも一理あるな」と思いました。
私の仕事に例えると
「クライアントの内面を勝手に想像するな、起こるトラブル全てが敵だ 」
「噂や思い込みに踊らされ勝手にクライアントを想像し、結果、アシスタントはおろか先生を危険にさらした」
になると思います。
こう表現してみると、確かにまずいし、言ってることは間違っていません。
想像することで「わかったような口をきかないで」「あなたに私の気持ちを決められたくない」と言われたら、リスニングを十分に行う信頼関係が作れません。
一方で「常に行き当たりばったりで結果を出せ」って無理じゃない? とも思っていました。
思ったこと
名越先生のいう「先入観」はあくまで「仮説」であり「思い込み」や「決めつけ」じゃない。
修正を前提とした仮説は立ててもいいことに、何かのヒントを得た気がしました。
この動画シリーズのコメントも一通り見て、当事者のしんどさや気持ちの輪郭が、ほんの少し見えてきた気がします。
「その人の立場になって気持ちを考えよう」なんて標語のようにそこかしこで言われますが、なかなかできるものじゃありません。
「当事者意識を持つ」って物凄くエネルギーがいるし、そもそも自分のことで精いっぱいで、他人に親身になる余裕がなかったりします。
その立場を経験しなければリアルな想像はできませんし、仮に同じ経験をしたとしても、出来事の受け止め方には個人差があります。
私はストーカーにあっていたとき、「やりたいけどできない」「体調不調がないのにベットから起き上がれない」「体重が10kg減っても一向に食欲がわかない」「何もない廊下で倒れて救急車」などのメンタル由来と思われる不調をそこそこ経験しましたが(笑)、まだまだ想像もつかないクライアントの気持ちがたくさんあります。
「あの時の私と同じだ!」と思い込んでしまうと、程度を間違えてしまいます。それよりもずっと軽かったり、重かったりするのが普通だからです。
ならどうしたらいいのか。
この方針なら私もいける! とピンとくる何かはまだ掴めませんが、名越先生の言葉やふるまいで、パズルのピースが見つかった気がします。
いろんな意味で面白い動画でした。
おわりに
原稿サポートや片付けを仕事に含めてから、この仕事の核はコミュニケーションにあると実感します。
初心者さんの躓くところはほぼ決まっていて、対処も候補が決まっています。
あとはそれを納得いくように組み合わせたり、出すタイミングを見極めて、微調節しながら身につくまで付き添うだけです。
私自身が知識や技術をアップデートしたり、大勢に披露するスキルも必要ではあるけど、持ってる引き出しの組み合わせと調整をスムーズに行う関係作りや、伝え方、教え方のほうが明らかに重要です。
全員に同じ対応をしても結果は出ないと分かったので、小日向文世さんのように引き出しの多い、バイプレイヤーやカメレオン俳優のようなコーチになれたらいいな。
これは経験を積むしかないので、闇雲ではなく意図をもって進みたいですね。
それはそうと、名越先生のぽっこりお腹は実に私の好みでした。笑
おしゃれなスーツの上からでもわかるシルエット、可愛い~!
ここまで読んで頂きありがとうございました!
来てくれた皆さんが素敵な時間を送れますように(˶ᵔ ᵔ˶)